
英文開示の「スピード・品質・コスト」を叶えるAI翻訳の活用法!事例でポイントをご紹介
2025年4月より、東京証券取引所プライム市場に上場している企業を対象に、「英文開示」に関する対応が本格的に義務化されました。これにより、従来は努力義務とされてきた英語での情報開示が、決算情報や適時開示情報については義務化され、企業は日本語と英語の両言語で同時に情報を開示することが求められるようになりました。
こうした背景から、多くのプライム上場企業が英文開示に向けた準備を進めてきました。
その中でIR担当者様が検討に時間を費やされたのが「翻訳体制」をどう構築するかという問題ではないでしょうか。
対応方法としては、主に以下の2つが選ばれています。
- 外部の翻訳会社へ依頼する方法
- AI翻訳を活用し、自社内で翻訳作業を行う方法
外部の翻訳会社に依頼する場合は、高品質な訳文が得られる一方で、費用が高額になることや、納期が長くなってしまう等の問題が避けられません。特に、開示スケジュールがタイトな場合や、急遽修正が入るケースでは、柔軟な対応が難しいという課題があります。
一方、AI翻訳は、コストを抑えつつ短時間で大量の文書を処理できる点が大きなメリットです。近年では、翻訳エンジンの品質が大幅に向上しており、実務レベルでの活用が進んでいます。特に、IR分野で扱うような定型文の多い文書は、AI翻訳に適していると言われています。
今回のブログでは、実際にAI翻訳を活用して英文開示業務を効率化しているお客様の事例をもとに、導入時のポイントや利用する際のコツについてご紹介します。
目次
活用事例①:翻訳前の日本語を簡潔にする
AI翻訳の精度を最大限に高めるためには、「翻訳前の日本語」が非常に重要です。原文の構造が複雑だったり、日本語特有の曖昧な表現が含まれていたりすると、どれほど優秀な翻訳エンジンを使っても高精度の訳文を得ることは困難です。
当社のお客様は、IR資料や決算説明会資料を作成する際、次のようなルールを設けています。
- 主語と述語のかかり方を明確にする
- 文章の途中で不必要に改行しない
- 簡潔かつ分かりやすく文章をまとめる
たとえば、決算説明会用のスライド作成時には、他部署のメンバーにも「AI翻訳を前提とした日本語」を意識して原稿を作成するよう依頼しています。こうすることで、AI翻訳にかけた際の訳文の精度が大幅に向上し、翻訳後の修正工数も削減できます。
複数の翻訳エンジンを試したり、訳文を何度も修正したりするよりも、原文の段階で整えておくほうが全体の作業時間を短縮できるため、結果的に業務効率化にも大きく貢献しています。
活用事例②:エンジンのカスタマイズで企業用語を統一
もう一つ、AI翻訳を効果的に活用する方法が「翻訳エンジンのカスタマイズ」です。
多くの企業では、過去に翻訳されたIR資料や決算短信のデータが蓄積されています。これらの既存データを活用して翻訳メモリを作成し、そのメモリを基にAI翻訳エンジンに追加学習させること(カスタマイズ)で、自社特有の表現や用語を反映させた自社専用のAI翻訳エンジンが作成できます。
※翻訳メモリ:過去に翻訳したことのある文章をデータベースに格納し、新規文書の翻訳時に再利用することで翻訳の効率化と、訳文の統一を図るもの |
たとえば「純利益」「営業利益」「当期利益」といった財務用語や、企業独自のサービス名、部門名などは、初期状態の翻訳エンジンだと訳語のばらつき(訳揺れ)や誤訳が発生することがあります。翻訳メモリを用意し、エンジンに事前学習させることで、こういった問題の発生頻度を少なくすることができます。
カスタマイズされたエンジンを使うことで、以下のような効果が得られます。
- 用語の統一
- 訳文の品質安定
- 翻訳後の修正負担の削減
結果として、社内レビューやチェックにかかる時間も短縮できます。IR翻訳は短納期・高品質が求められる業務ですが、こうしたカスタマイズを行うことで、限られた時間の中でも安定した品質を確保することが可能になります。
まとめ:AI翻訳を活用した英文開示対応は「準備」が成功のカギ
英文開示の義務化は、企業にとって「翻訳の質」と「スピード」の両方を求められる業務です。そのため、単に翻訳エンジンを導入するだけでは十分とは言えません。
作成される訳文の品質向上のため、原文となる日本語をわかりやすく整える工夫や、過去の翻訳データを活用した翻訳エンジンのカスタマイズといった「事前準備」をどれだけ行えるかが、成功のカギを握っています。
AI翻訳は年々進化しており、前述のとおり、IR分野で扱うような定型文が多い文書では高い効果を発揮します。AIを活用して翻訳プロセス全体を見直すことで、英文開示対応の業務負担を大幅に減らせる可能性があります。
当社はAIと翻訳のノウハウをご提供することで、そのお手伝いをさせていただいています。
これから英文開示対応を本格的に始める企業の皆様にとって、この記事が少しでもご参考になれば幸いです。
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