
AI自動翻訳システムを活用したIR英文情報開示支援事業のご紹介
弊社は、東京都の「AI自動翻訳システムを活用した英文情報開示支援事業に関する委託業務」を受託しました。今回は英文開示の重要性およびその現状、AI自動翻訳の活用について、また、東京都の支援事業の内容をご案内します。
目次
背景
東京都は2017年に策定した「国際金融都市・東京」構想の改訂を行い、2021年11月に「『国際金融都市・東京』構想2.0」を公表しました。国際金融都市・東京の地位を確立するためには、金融関連プレイヤーの集積や活動に加えて、東京に立地する多様な企業がその魅力を英語で海外に発信し、IR活動を通じて東京に投資を呼び込むことが重要です。
しかし、多くの企業では、IR情報を英文で開示する重要性については理解しているものの、ノウハウの不足や事務負担の増加懸念などの理由から、英文開示に踏み出せていないのが現状です。
また英文での資料作成の不安として、品質、リーガルリスク、情報セキュリティなどの課題が多いという意見も寄せられています。
本委託事業は、英文によるIR情報の開示がまだ進んでいない上場企業に対し、高精度AIによる自動翻訳システムの利活用に関する支援を行うことで、企業の円滑な英文情報開示を促進し、国内外の投資家からの都内企業への資金供給を促していくことが目標となっています。
英文開示の必要性
2024年度末時点で海外投資家の日本株保有比率は32.4%となり、過去最高の水準を記録しています。しかしながら、海外投資家の回答では、現状の日本の上場企業の英文開示に対して72%が不満を感じています。多くの海外投資家が、「英文開示が不十分であることにより、投資行動や対話に影響が生じている」と回答しています。
日本の証券市場で大きな存在感を持つ海外投資家に向けて、投資判断に必要な情報を英語でも提供し、海外投資家に対する公平な情報提供を実現することにより、下記のような効果が期待されます。
- 海外投資家からの投資獲得
- バリュエーションの向上
- 英文開示が不足することによるアンダーウェイトの回避
- 海外投資家との対話の促進
プライム市場においては2025年の4月1日より英文開示に関する努力義務及び決算情報・適時開示情報の日英同時開示が義務付けられました。このような背景から、現在、日本の上場市場における英文開示へのニーズとその実施率は継続的に高まっています。
スタンダード・グロース市場上場企業における英文開示
スタンダード・グロース市場上場企業においては、プライム市場で設けられているような英文開示の義務等はありませんが、海外投資家から投資を呼び込み、企業価値向上につなげるという観点から、英文開示は有用であると考えられます。
CGコードでは、自社の株主における海外投資家等の比率も踏まえ、招集通知の英訳を進めるべきとする補充原則や、合理的な範囲において英文開示を進めるべきとする補充原則があります。当該補充原則を実施しない場合には、その理由を説明することが必要となります。
その際、一部の上場企業において、現時点の自社の株主における海外投資家比率が低いことを理由として、英文開示を実施していないと説明する例が見られますが、英文開示がないことが海外投資家の投資の制約になっているとも考えられるため、資本政策も踏まえつつ、英文開示の在り方を検討することが望まれます。
海外投資家のニーズ
海外投資家はどのような情報を求めているのでしょうか。東京証券取引所が実施したアンケート調査によると、多くの海外投資家は、英文開示が不十分であることで投資行動や会話に影響が生じていると回答しています。さらには英文開示の範囲が狭い、開示タイミングが遅いといった意見も多いようです。
2024年12月末時点では、プライム市場においては決算短信の英文開示が90%を超えている一方、スタンダード市場、グロース市場については30%にも満たない状況です。
免責文言の活用
十分なチェック体制がないことや誤訳による訴訟リスクなどの懸念により、英文開示をためらっているという声も聞かれます。そうした場合には免責文言を活用して英文開示を始めてみることをご提案しています。
特に、英文開示は参照用であり日本語原文が情報開示として正しいものであることや、機械翻訳を使用しているために誤訳やエラーの可能性があることなどを明記しておくことで、海外投資家の注意を喚起することも重要です。はじめから完璧な英文開示を求めず、まず始めてみて段階的に範囲を広げていくことをお勧めします。
※免責文言については下記のページをご参照ください。
https://www.jpx.co.jp/equities/listed-co/disclosure-gate/form/index.html
機械翻訳について
従来、機械翻訳は人手による翻訳には遠く及ばないとされていましたが、近年はAIによって目覚ましく高精度化し、現在は様々な分野の翻訳に活用されるようになりました。
IR情報の翻訳においても、IR/適時開示に特化した翻訳エンジンが存在し、これを活用することによって翻訳時間を大幅に削減しつつ高精度な翻訳を出力できるようになっています。
東京証券取引所が発行した英文開示実践ハンドブックには、NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)が開発した金融分野向けの専門エンジンを用いると翻訳文の精度が大幅に向上することが明記されています。
汎用と金融分野向けの2つの翻訳エンジンを使って、訳文を1文ごとに5段階評価で比較したときに、全訳文の5割弱を金融専業翻訳者に匹敵する最上位品質(P)の評価で占めることが確認されています。
英文開示を進める上で金融専門エンジンを利用することが重要だと理解できます。
AI自動翻訳システムを活用した英文情報開示支援事業に関する委託業務の支援内容
この度、弊社は東京都の委託事業である「AI自動翻訳システムを活用した英文情報開示支援事業に関する委託業務」を受託しました。
スタンダード市場またはグロース市場に上場し、東京都に本社または支社(支店)を有する企業様に対して、最大100社様限定で以下のサービスを実施いたします。
1.AI自動翻訳システムの3ヶ月無償提供
2.AI自動翻訳システムの利用に関する操作講習会
弊社のご提供する機械翻訳サービスでは、安全な環境でAI自動翻訳を使用することが可能です。
NICTが開発したIR/適時開示専用のエンジンを搭載しており、精度の高い翻訳結果を出力できます。これまでAI自動翻訳を活用したことのない企業様においても、ハンズオンによる操作講習会を実施いたしますので、安心してスタートしていただけます。
企業様の費用負担は一切ございません。無償でスタートできるこの機会に、ぜひご検討ください。
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